2010年3月24日

日本と欧米諸国のワクチンギャップ

おむつ処理に注意を=ポリオ予防接種、二次感染恐れ-

厚労省厚生労働省は、ポリオ(小児まひ)の予防接種を受けた子供から家族らに二次感染することがまれにあるとして注意を呼び掛けている。ワクチン接種後15~37日間にわたり、ウイルスが便に排出されるため、おむつを替えた際などは、入念に手洗いするよう保護者や保育所に求めた。
 神戸市は先月、市内の男児がポリオを発症したと公表。男児はワクチン接種者から二次感染した疑いがあり、同省は今月11日付で都道府県や政令市に通知を出した。
 同省によると、ポリオウイルスに感染すると0.1%程度の割合で手足などにまひが生じ、後遺症が残ることがある。国内の自然感染は1980年が最後だが、海外には現在も患者がおり、国内流入の恐れがあるため、予防接種を続けている。

3月22日14時51分配信  時事通信




ウイルスによって引き起こされるポリオ(小児まひ)は
ワクチンによって予防することができます。
WHOは全世界的なポリオ根絶キャンペーンを敷いており、
1988年には、35万あった発生を、
2002年には1918まで減少させました。

ポリオワクチンには2つの種類があります。
OPV(Oral Poliovirus Vaccine)と
IPV(Inactivated Poliovirus Vaccine)です。
OPVは生ワクチンで口から飲ませますが
IPVは不活化ワクチンで注射します。



なぜ今回のような事件が起こったかと言えば、
日本はOPVを使っているため、
ワクチンのなかにいるウイルスによって
実際のポリオに罹ってしまう危険性があるからです
(VAPP Vaccine-associated paralytic poliomyelitisといいます)。
WHOによれば世界的に見て、
およそ250から500のOPVによるポリオが発生しており
(Weekly epidemiological record No.28,2003,78,241-252)、
この数は100万出産数あたり2-4に相当します。

VAPPの危険性を避けるため、
先進国を中心とした国々では
OPVからIPVへの切り替えが行われました。

その中で唯一OPVを使用しているのが日本なのです。

おそらくこの記事を読んでいる皆さんは、
日本は先進国なのだからワクチン対策も
他の先進国と変わらないと思っている方が
多いのではないでしょうか。

残念なことに日本のワクチン行政は
他の先進国から大きく遅れを取っています。
ポリオワクチンだけでなく、
ヒブ(Hib)ワクチン、肺炎球菌ワクチン、
子宮頸がんワクチンなどの導入も遅れています。

導入が遅れているだけでなく、
他の諸国ではワクチン接種が
公費でまかなわれるのに対して、
我が国では高額な負担を強いられることが多くあります。
これはH1N1豚インフルエンザワクチンで
経験された方がいるのでは無いでしょうか。

何故、我が国だけこんなにワクチン行政が遅れているかというと、
ワクチンを何のために使うのか、
という国の認識がなされていないから、
といえるのではないでしょうか。

ワクチンには必ず副反応があります。
希にではあっても重篤な副反応で命を落とすこともあります。
しかし、そのリスクがあっても国民全体というマスを、
感染症から守るために使うのがワクチンです。
この概念は正に公衆衛生の考え方です。


ですから、当然ワクチン費用は
政府が負担するべきであり、
副反応のリスクについても国民に対して説明すべきです。
そして、不幸にして重篤な副反応が起こった場合には
十分な補償がされるべきなのです


ところが日本はワクチン政策のいろはが分かっていないで
ワクチンをつかっているためか、
上に書いたワクチンインフラ自体が出来ていないのです。

欧米先進国と比べてワクチン行政は20年以上遅れていると言われます。
ワクチンは国の感染症対策の大きなツールですから、
言い換えれば日本の感染症対策自体が
世界と比べて大きく立ち後れているといえます。

これから益々ワクチンの話題は
取り上げられることが多くなるでしょう。
それはこれから日本が大急ぎで先進諸国に
追いついてゆかなければならない分野だからです。
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久々に写真をアップします。先日兄の誕生日に娘たちが作ったケーキです!

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