2010年6月13日

口蹄疫問題を考える―危機管理の立場から―vol.6

清浄国(FMD free)のお墨付きは意味があるのか。

国際的に、FMD freeであることが
貿易の面で重要とされていますが、
今回はFMD Freeとはどういうことか、
果たしてそれ自体、達成可能なものなのか、
という事について書いてみます。

現在の清浄国の定義は、OIE(国際獣疫事務局)の定義に基づき、
我が国では農林水産省が規定しています。(http://www.maff.go.jp/j/syouan/kijun/wto-sps/oie6.html
http://www.maff.go.jp/j/syouan/kijun/wto-sps/oie/pdf/rm5fmd.pdf
これを見る限り、
ある一定期間FMDの発生が抑えられているというのが
「清浄国」という条件のようです。

しかしながら、本当にdisease freeというのであれば、
この世界からFMDウイルスがなくなる事が必要です。
これは根絶(eradication)といい、
制圧(control)とは明確に分けられている概念です。

それでは、ウイルスを根絶するためには
どうしたらよいでしょうか。
ウイルスに特効薬はありませんから、
治療薬で退治することは不可能です。
となれば、感染経路を遮断する以外にはありません。

感染経路を潰すには2つの条件があります。
第1に感染経路が明らかであり、
物理的に遮断できること。
第2に有効な予防手段が存在することです。


この条件を満たし、
実際に地球上から根絶されたウイルス感染症は天然痘です。
ヒトの天然痘ウイルスは
感染したヒトの口や鼻から排出されるウイルス、
あるいは水疱が破れてかさぶたになった部分から
まき散らされるウイルスを吸い込むことによってうつります。

天然痘には、ほぼ100%効果的な予防方法である、
天然痘ワクチンがあります。
このため、天然痘患者を隔離し、
患者の周りにいる人20人にワクチンを打つことによって、
1980年、天然痘患者はこの地球上から消えました。
ポリオも感染経路が分かり、まだ根絶には至っていませんが、
WHOの取り組み方が間違っていない限り
近い将来根絶しうるウイルス感染症です。

それではFMDはどうでしょうか。
感染経路は明らかになっている中でも、多岐にわたります。
同種の動物間だけでなく、
他の動物、昆虫、水、風などです。
動物には人間も含まれますから、
これらの感染経路を全て遮断するためには
人間までも殺しつくさなければなりません。
たとえそうしたとしても、
水や空気の流れを遮断することは不可能です。
また、予防法についても、
ワクチンを含む有効な手立てはありません。


こうなると、FMDウイルスを
地球上から根絶することは無理だ
と言うことがわかります。
根絶できない以上、一度流行が収まっても、
必ずまたやってきます。
そのようなウイルスに対して、
「FMD free」という概念は当てはまらないのです。

ここでもう一度、FMDがどういう病気か振り返ってみましょう。
蹄が2つに割れている動物を襲う感染力の強い病気だが、
多くの動物は治癒します。
ヒトにうつることはなく、感染した肉を食べても問題ありません。
流行が収まっても、
またちょくちょくやってくる感染症であり、
super killerでもないウイルスに対して、
清浄国のお墨付きを与えること自体、
理にかなったことではありません。


科学的根拠に基づかない、
清浄国(FMD free)という概念は不適当だ、
と声を上げるのは「和牛」という希有なブランドを生産する、
我が国こそが先頭に立ってするべきことではないのでしょうか。


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