2010年8月25日

HPVワクチン騒動 vol.3 -科学的根拠を基にワクチン導入は行うべき-

子宮頸がん対策実現を求め超党派集会、議員連盟結成へ松氏が代表呼び掛け人
 ワクチンへの国費助成など、子宮頸(けい)がん予防対策の実現に向けた超党派国会議員の緊急集会が6日、国会内で開かれた。公明党の松あきら副代表(参院神奈川選挙区)を代表呼び掛け人に開催。与野党から約40人が参加し、議員連盟を結成する方針を確認した。

 次の臨時国会での予防法成立を目指す。出席したのは民主党の桜井充政調会長代理、自民党の松本純副幹事長(衆院比例南関東)、みんなの党の川田龍平政調会長代理ら。松氏は「生命にかかわる問題であり、党派を超えて取り組みたい」と呼び掛け。桜井氏は「子ども手当見直しにつながる最適な現物支給政策」などと推進を表明した。

 また、闘病体験を持ち選挙戦で同がん対策充実を訴えてきた三原じゅん子氏(参院全国比例、同党川崎市連所属)は「この病気から若い世代をはじめとしたすべての女性を救いたい。それこそが真の少子化対策だ」と決意を表明した。

 集会では自治医大の鈴木光明教授、日本医師会の今村定臣常任理事が予防対策のポイントなどを解説。闘病体験を語りつつ予防啓発運を進めている女優・仁科亜季子氏が寄せたビデオメッセージも披露された。

2010年8月6日 カナコロ



今までいくつかHPVワクチンについての記事を書きましたが、
HPVワクチンの流れがおかしな方向に進んでいるのではないか、
と危惧しています。
それは政府でその有効性と優先順位を議論せず、
一部のマスコミや政治家などによるお祭り騒ぎによって、
ワクチン公費助成が叫ばれているからです。
厚生労働省ではHPVワクチン公費助成のため150億円予算請求します。
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100817/plc1008170928006-n1.htm



HPV(Human Papilloma virus)は子宮頸がんの患者には100%存在します。
HPV感染を予防するのがHPVワクチンです。
しかし、子宮頸がんの原因は複数存在します。
単独で影響があるといわれている原因(危険因子)はたばこである、
という報告があります。
その他にも人種差、遺伝、食生活など様々な原因があるのです。
HPVはその中のひとつであり、HPV感染を抑えたからと言って、
子宮頸がんの死亡率が低くなるかは未だ明らかになっていません。
同タイトルvol.1参照

この理由から、私は子宮頸がん(予防)ワクチン
というのは誤った呼び方であると思います。
本来はヒトパピロマウイルス(HPV)感染予防ワクチンと呼ぶべきでしょう。
私はHPV感染予防に関して積極的に反対してはいません。
むしろ、どれだけインパクトがあるかは別として、
性交渉を経験していない女性に対しては接種を進めても良いと考えています。

問題はその進め方です。ワクチンには必ず副反応があります。
稀ですが重篤な副反応では命をおとすこともあります。
そうしたリスクをおかしても、国民や世界人口という集団を、
病気から救うという、公衆衛生の代表的ツールです。

日本はワクチン対策において、先進諸外国から大きく立ち後れています。
これは我が国の公衆衛生インフラが脆弱であることを
如実に示しています。
遅れているものは進めなければなりません。
海外では接種されているのにもかかわらず、
日本では導入の目処すら立っていないワクチンは数多くあります。
その導入についてある特定のワクチンを、
科学的検証無しに優先させる事はおかしいのではないでしょうか。

例えば、細菌性髄膜炎菌(Hib)ワクチン、
IPV(ポリオ不活化ワクチン)、
肺炎球菌ワクチン、
HBV(B型肝炎ワクチン)など、
疾患に対する予防効果が認められ、
世界の多くの国々で使われながら日本では使われておらず、
導入にむけて早急に議論する必要があるものです。

病気のインパクトを子宮頸がんとその他の病気と比べてみましょう。
細菌性髄膜炎に罹ると、後遺症を残す例が10~20%、死亡率が2~3%です。
5歳未満の発症が多く、この年代に限れば、
700人の患児の中で、15~20人が死亡することになります。

B型肝炎は日本に100万人以上の感染者がいると言われます。
感染者の10%程度が慢性肝炎になり、
慢性肝炎から肝細胞がんなどを発症して死亡する例が0.4%程度です。
細菌性髄膜炎にしてもB型肝炎にしても、幼児期のワクチン接種が有効です。

これに対して子宮頸がんはどうでしょうか。
性交開始後に約60%がHPV感染し、90%は自然治癒(消失)します。
残りの10%のうちの一部が、20年くらいかけて
扁平上皮(子宮頸)がんになります。
最終的に子宮頸がんになるのはHPV感染した女性の
0.1%程度と報告されています。

この数字を見る限り、
HPVワクチンがHibワクチンやHBVより先行して導入される理由は
見つかりません。

また、がんの一つの種類に特化して法律を作り
政策が決定されていくというプロセスもおかしなものです。
他のがんに対してはどうして同じように扱わないのでしょうか。
HPVワクチン導入に関する一連の流れをみる限り、
予防接種、がん対策といった、国の公衆衛生に対する
認識の欠如による結果ではないでしょうか。

有効なワクチンによって最も利益を得るのは子供達です。
政府は「Children first」を謳っているのですから、
次世代にとって最も恩恵を受ける政策決定をしていただきたいものです。
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