2012年5月27日

細菌性髄膜炎(Hib)ワクチン報道に関する、多いなる懸念


細菌性髄膜炎(Hib)ワクチンについて、以下のような報道がされました。



小児ワクチンで乳児3人死亡」5月26日 5時19分 NHK NEWS web

幼い子どもがかかる「細菌性髄膜炎」を予防するワクチンを接種した乳児3人が、接種のあと死亡したことが分かりました。

厚生労働省で25日開かれたワクチンの副作用についての調査会では、去年12月から先月までに幼い子どもがかかる「細菌性髄膜炎」を予防する、肺炎球菌ワクチンとヒブワクチンを接種した6か月未満の乳児3人が、接種のあと死亡したことが報告されました。
これについて、厚生労働省は3人のうち2人は別の病気が原因で死亡したとみられ、ワクチンの接種との明確な因果関係は認められないほか、もう1人については医療機関から詳細な報告が来ていないと説明したということです。
細菌性髄膜炎を予防するワクチンを巡っては、接種して死亡したケースがこれまでに合わせて16例報告されていますが、いずれも接種との明確な因果関係は認められないことから、厚生労働省はワクチンの接種を行っても問題はないとしています*。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120526/k10015390531000.html

*http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000008fcs.html#shingi28



ワクチンに関しては、今までも発言してきましたが、
今回の報道に関しては、違和感を感じます。

ワクチンは、国民や、世界人口といった、大きな集団を、
疾患から防ぐための重要なツールです。
どの薬剤にもあることですが、必ず副反応はあります。
そのワクチンに対して、合わない体質を持っていた場合などで、
死亡したり、重篤な後遺症を残すことがあります。
多くのワクチンにとって、こうした重篤な副反応はまれですが、
ゼロではありません。
しかし、その可能性を鑑みても、マスを病気から予防する、
という利点が上回った場合に導入するのが、ワクチンです。

例えば、仮に、重篤な過敏反応で、10万人に1人は死亡する可能性があるが、
もしその病気にかかったら、約10%(10万人のうち1万人)は死亡する、
感染症があったとしたらどうでしょうか。
数だけで単純比較は出来ませんが、こんな病気の場合は、
ワクチンを全国民に打つのが、政府の役割だと思います。
それは、10万人に1人の確率で起こるリスク回避を優先したために、
それ以上の人たちが、死の危険性がさらされるという事になるからです。
これを「公衆衛生」学的考えと言います。

政府、すなわち厚生労働省は、国民というマスを
いかに危険にさらさないか、という政策を行うところですから、
まさしく、公衆衛生行政を行う役所です。

ところが、この報道をみると、Hibワクチンを国の責任において実施し、
子どもを、当該疾患から守ろうとしているのだろうか?
と頭をかしげるばかりです。

いったい、3人とは、何人受けたうちの3人なのでしょうか。
10人受けて3人亡くなったのであれば、大変なことです。
しかし、100万人に接種されて、となると、話は違ってきます。

因果関係について調査をするのは当然ですが、
あたかも、このワクチンが非常に危険な代物であるかのような
過大広告をしたいのか、と疑いたくなります。
かつて、”新型”インフルエンザが流行した際、
「1人亡くなった、2人亡くなった」という報道ばかりがされました。
集団における、健康被害を考えるとき、
個別症例(分子)ばかりを数えて、母数(分母)を示さなかったら、
社会的なインパクトは論じることが出来ません。

いつもながら、プロ意識が全く欠如した厚労省の行動と、
それと同じくらい稚拙なタイトルをつける報道機関に、
大いなる不信感を抱いたところです。
仮にも「公衆衛生」を司る行政機関がこのような姿勢では、
Hibワクチンを必要な子供に速やかに接種する、という重要な課題に対して、
要らぬ妨害が入ることを、非常に危惧しています。

今回の報道に関して、御意見あるかたは以下のサイトから、
ご投稿いただければ幸いです。
http://www.nhk.or.jp/css/

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私宛に(@kimuramoriyoと付けて)twitterにお願いします。